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日経ネットのBiz+Plusコラム掲載(第3回)

2006年08月10日

敵対的買収:北越製紙問題に思う



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TBS問題に思う−2: 両社合意(11/30)の所感

2005年12月05日

先日のTBS楽天の合意について、休戦であって決着ではないが、株をめぐる争いが続けば互いに企業イメージや信用力を損ねることとなったであろうから、両社にとって非常に賢明な選択だと思う。来年3月末までに、互いの提携のメリットを具体的に示すことができるかどうかが課題となる。しかし、失敗すれば再び戦闘状態に突入することはありうる。

 確かに、楽天は、40%程度のTBS株を握ってから経営統合を迫っていれば押し切れたが、20%に満たなければ当初から無理があっただろう。TBSが楽天に保有株の放出など困難な注文をつけ協議入りを拒んだのも、信頼関係がまだない以上無理のないことだ。

 今後は両社とも業務提携委員会の場での力量が問われる。現時点で楽天はTBSを説得しきれず再び株式の公開買い付け(TOB)などの強行策に打って出ても、成功する可能性は高くない。TBSは協議に入る以上、株主の利益を守る明確な合意案を示さなければならないだろう。業務提携の中身と、楽天保有株の処分のあり方がこれからのポイントになる。



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大株主の社会的責任

2005年11月14日

会社株主のものであり、経営者や従業員はその「僕(しもべ)」であるとまで言う人がいる。確かに、会社は株主が所有している。しかし、所有しているからといって会社を傷つけてもいいのだろうか。たとえば、生き物の飼い主はそれを所有しているが、だからと言ってそれを傷つけてもいいのだろうか。それは許されるべきではないだろう。

会社が存在することによる恩恵を、従業員、その家族、取引先その他の利害関係人が共有している。大株主は、会社の価値を毀損(きそん)して、これらの利害関係者に不利益をこうむらせてまでも、株主だけが利益を得てもいいのだろうか。大株主は、その会社の価値を高めることを願い会社の利害関係者に利益をもたらすことを支援する社会的責任があるのではないか。現在問題になっているM&Aも、今後起こってくるM&Aも、「大株主の社会的責任」という観点からも考えていく必要がある。



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阪神問題に思う4:敵対的買収(「純投資」目的で「経営権」を取っていいのか)

2005年11月14日

敵対的買収とは、買収対象企業の経営陣の賛同を得ずに経営権を取得しようとする買収のことである。今回の村上ファンド阪神電鉄の買収はどうか。明らかに敵対的買収である。村上ファンドの社会的意義は常々言っているように、よい意味で非常に大きい。世の経営陣に株主の意味を問いかけ緊張感をもたらした。

しかし、今回の阪神電鉄の買収問題はどうであろうか。5%ルールの特例を利用し、「純投資」目的で株式を取得し、経営陣の気がつかないうちにいきなり「経営権」を握れる大株主になってしまった。敵対的買収とは決して公開買付を伴う必要はなく、市場で株を買っても同様である。「純投資」と称して「経営権」を取るとするような買収はフェアなのか。確かに違法ではない。しかし、違法でなければ許されるのか。今後、村上ファンドが阪神電鉄の経営権を支配しようとするなら大きな問題であり大いに議論する必要がある。

村上世彰氏が阪神電鉄の経営権を支配しようとしないこと、その「倫理感」に期待したい。



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TBS問題に思う

2005年10月18日

三木谷さんTBS株の20%近く保有していると報じられている。今回の楽天のTBS株式取得は、拙速の感は否めない。仮にTBSにとってよい提案だとしても乗っ取り的に受け止められても仕方がない。

今後の展開は、楽天が世論を見方につけられるか、TBSが統合案を拒否しても楽天が一気に株式取得に動くかどうかである。TBS経営陣の意向に反して買収に動く場合、定義上敵対的買収となるが、その善悪については、本来その買収提案の内容によって決せられるべきものである。

今後、仮にTBSが三木谷さんの統合提案を拒否したときに、三木谷さんがどう出るかによって展開がまったく違ってくる。言うまでもなく、現段階では横浜ベースターズや楽天球団について議論するのはまったく意味がない



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阪神問題に思う−3:阪神ファンの力

2005年10月08日

村上ファンドはすでにおよそ4割の株式を所有し、今株主総会を開けば過半数の議決権を取得する可能性が高い。勿論、第三者割当増資等で村上ファンドの持分比率を薄められる可能性がないことはない。しかし、もしそれが認めらなければ村上ファンドが経営権を取得することになる。通常の会社の買収であればこれで勝負ありとなる可能性が高い。

しかし、阪神は違う。株主でも債権者でもない阪神ファンは社会的に大きな発言力をもつ団体である。この団体が、村上ファンドの経営権取得に賛成するならともかく反対したとしたら、それでも村上ファンドは阪神の経営権を取得できるのだろうかという疑問が湧く。村上さんは常々、敵対的買収はしないと言っている。阪神ファンに敵対した経営権の取得は、村上ファンドの今後の事業にも影響を及ぼしかねない。そういう意味で、阪神問題は阪神ファンの賛否の持つ意味が非常に大きい。

阪神タイガース上場提案は、今回の阪神買収問題から阪神ファンを分離させる手立てのようにも見える。



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阪神問題に思う−2:タイガース上場について

2005年10月08日

タイガース上場問題が議論を呼んでいる。果たしてタイガース上場が今回の阪神問題の本質だろうか。タイガースの上場に目を奪われてはいけない。本質は、阪神電鉄株の経営権がどうなるかである。タイガース問題は阪神のグループ経営の一環で考えるべき問題である。阪神グループの経営改善提案全体の中で議論すべきである。

確かに球団の上場自体だけを取り出してもいろいろな議論はできる。しかし、上場と言っても、一般に公開する株式比率はどれだけなのか、その他の株主は阪神電鉄だけなのか、村上ファンドも入るのかが重要であり、それらを抜きに上場の賛否を論じても本件の本質には迫れない。



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阪神問題に思う:5%ルールの問題点

2005年10月08日

現時点で村上ファンドが40%程度、実質的に株主総会の普通決議を通すだけの株式を所有している状況で、第三者割当増資新株予約権の発行等で村上ファンドの持分を希薄化させ議決権の過半数を奪還することは極めて難しいと言わざるを得ない。
増資等の資金使途を明確に説明できなければ経営者の支配権維持とみなされるからである。ではなぜ、突然大株主が出現したのか。

通常、5%ルールというのがあり、発行済株式の5%を超えて取得した場合5日以内に大量保有報告書を提出しなければならない。したがって、いきなり大株主が出現することはまずない。しかし、証券会社・投資顧問業者等支配権取得目的がなければ10%以下であれば概ね1〜3ヶ月以内に届け出ればいい特例がある。

村上ファンドはこの特例を利用し買い進み、阪神百貨店の統合転換社債取得を組み合わせいきなり3割近い大株主になり4割にまでになった。当初の株式取得に明確な支配権取得目的がなくとも、最終的に支配権を取得するような状況になった場合は、果たしてそこまで買い付けた行為自体がフェアなのかどうか考えなおす必要がある。5%ルールの見直しは必須である。



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ワールドのMBO型非公開化

2005年07月26日

7月25日午後、ワールド非公開化が発表された。このスキームは、いろいろな条件が揃ってやっと成立する日本で初めてのものである。その主なものは、@「社長の経営力と人徳」を核とした経営陣の質の高さ、A事業の安定性と成長力、B財務体質の健全性、C出資者および融資団のスキームに対する理解、D従業員のサポート、E妥当な株価と買収プレミアム、というところだろうか。本件、上記すべてが満たされている非常に稀有な会社であると実感した。したがって、今回のスキームがまともに当てはめられる会社はそうあるものではない。多くの方々から賛同のご意見がよせられているが、さらに幅広い層からの支持を受け、TOB(株式公開買付)が無事完了することを祈りたい。

いくつかの報道では、敵対的買収の防衛が目的かのように報じられているが、今回のMBO(Management Buy Out)はまったくそれを目的としたものでなく、非公開化により企業価値をさらに高めようという非常に前向きなものであることを大阪の記者会見で何度も何度も確認されていたにも関わらずそのような報道がなされるのは、マスコミのサガとして許容せざるを得ないのだろうか。また、一部報道では、「経営陣の暴走をチェックできなくなる恐れがあり、経営陣の保身と言われても仕方がない、市場の監視を受けながら事業を進めるのが経営の本質ではないか。」とのコメントがあった。今回のMBOの本質をもっと理解すべきである。

まず、経営陣の暴走のチェックについて:今回のMBOでは多額の買収資金を大手金融機関が出すことになり、これはTOBが成立した後に長期の融資に切り替えられる。この融資を受けている期間、これら大手の金融機関からの厳しい監視下に置かれることになる。経営陣の暴走は許されないし、仮に経営状況がおかしくなったときは、優先株で出資する金融機関が議決権を行使する等、経営陣の交代をも可能になるような仕組みになると予想され、暴走を監視する目は、見方によっては現在よりも厳しくなる。したがって、経営陣の保身にはならない。

次に、株式市場の監視を受けながら事業を進めるのが経営の本質か:それは、誰もが株式を取得できる公開企業にのみに当てはまる考え方である。当然、公開していない企業の方が圧倒的に多いのであるから、経営の本質が株式市場の監視を要件とはしていないのは明らかである。
【なお上記意見は、私の個人的な純粋な意見であり、関連する企業等からの依頼に基づくものではありませんし、GCAの会社としての意見でもありません。念のため申し添えておきます。】



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株主総会に思う:会社は誰のものか

2005年07月01日

今年の株主総会も山を越えたが、6月29日に三共の株主総会に出席した。第一製薬との統合に関し、村上世彰氏が反対しいろいろと質問したが、ほとんどを庄田社長が丁寧に答え、統合が承認された。一昔前なら総会屋は存在したが、村上氏のように理詰めで経営者と対話する人は存在しなかった。その意味で、村上氏の存在は評価している。
しかし、今回の三共と第一の統合についての彼の、「三共は買う側ではなく買われるべき」との論理は、納得性を欠いた。上場企業が公開買付(TOB)で買収される際には、時価にプレミアムを乗せる。したがって、確かに三共が買収されれば株主はプレミアムを受け取ることができる。
しかし、これは武田でもアステラスでも同じで、どこの企業も買収されたほうが儲かればいいという短期的な株主にとってはいいことになる。しかし、上場企業の経営者が買収されるために経営すべきなのか。買収されるということは、経営権を買手に譲ることを意味するのみならず、従業員や取引先も買収側よりも劣後する位置に追いやることである。利害関係者の立場を弱めるような経営を目指すべきではないだろう。

一部のマスコミには、村上氏から洗脳されたかのように彼と同じ意見が掲載されていた。村上氏が意見を言うのは結構だとしても、マスコミがことの本質を考えずして同調するのは情けない話である。三共の統合が株主総会で否決されたなら大きなニュースになるのだろうが、可決されてマスコミの取り上げ方も小さかった。村上氏がマスコミを利用するのは仕方がないが、マスコミ側は自分自身で経営というものを考えて欲しい。三共は、十分に株主の意見を聞いたうえで、採決に入り株主の不満は残らなかったと思う。
では、同日行われたフジの株主総会はどうだったか。拍手と共に怒号の中で、質疑が打ち切られたという。もしもフジの株主が一人だったら、株主は、ニッポン放送問題の対応のしかたについて経営責任を追及しただろうし、経営陣の続投はあり得なかったであろう。会社が株主のものではなく経営者のものとの印象を持った人は多かっただろう。
村上氏は、会社は株主のもので、経営者、従業員は「株主の僕(シモベ)」であるという。それは言いすぎだと思うが、会社が経営者のものか株主のものかと聞かれれば、株主のものと答えるしかないだろう。
しかし、上場企業で株主が分散していればいるほど、株主の声は小さくなり経営者が好きなように会社をコントロールする。日本市場には、会社に多額の現金を抱えたまま、非効率な経営陣が経営し続けている会社が数多く存在する。
そのような会社に、効率化を迫りながら結局現金を配当という形で吸い上げるのではなく、敵対的買収の手段を通じてでも実際に経営権を取得し企業価値を上げるような投資家が出現すればその会社の従業員、取引先も歓迎し日本経済を活性化するものと考える。



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株主の意見を聞かない買収防衛策は有効か:TBSの新株予約権

2005年06月06日

先日、ニレコの買収防衛策の差止めが東京高裁で決定された。非常に納得感のある決定であった。ニレコ案は、「今年の3月末の株主にだけ新株予約権が発行され、その実行の可否を特別委員会で審議するが、決定は取締役会が行う」というまさしく防衛策の欠陥品で、ニレコの案が差止めにならないなら、経営陣は容易に支配権維持できるようになってしまう。野球で言えばワンバウンドはストライクではないんだという、余りにも当然の決定が出たに過ぎないともいえる。
では6/3に実行されたTBSの防衛策はどうか。日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)1社に対し新株予約権を発行した。NPIが通常時に行使しようとするとその価格は現在の時価の約2倍の4,000円、買収が仕掛けられたときに、特別委員会の勧告を参考に取締役会が必要と認めたときは、その時点の時価の9割の価格となる(時価が2,000円とすると1,800円)。すなわち、実質的に、敵対的買収の防衛時にしか行使されない新株予約権である。ここで問題となるのは、平時にもかかわらず株主の意見を聞いていないことである。

何も発生していない状況下で株主の意見を聞かずして、経営陣だけがこのような防衛策をとってもいいのか。適切な防衛策かどうかの分岐点は、「経営陣が支配権維持にも使用できるかどうか」である。その観点では、TBSの防衛策は、経営陣が支配権維持にも使えるのは明らかであり、今回の防衛策が認められるなら、多くの上場企業が同様の防衛策をとってしまう可能性が極めて高い。ストライクゾーンからボール3個外れてもストライクかどうかは審判に任せようというに等しいルール変更である。まともな野球にはならない。利害関係者は、事の重要性をよく認識すべきである



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会社は買われるべきなのか:三共-第一製薬合併問題

2005年05月30日

三共第一製薬の合併で、村上ファンドから合併反対の意見表明があり、その理由として、『三共は「買う側」ではなく、武田やアステラスに「買われる側」に立ち、より大きな企業再編に参加する方が望ましい』とのことであった。
これは、これまで村上氏が幾度となく主張してきた点で、最近のマスコミにも、三共は武田やアステラスに買収されるべきじゃないかと村上氏と同じ意見が紹介された。この買われる側に回るべきという村上氏の意見は、今回の合併が「三共が主導権をとる、すなわちM&A的買う側に立ったために約1割のプレミアムを第一製薬に支払う」という三共の主張に反論したものである。
果たして、会社は「短期的利益を追求する株主のためにだけ」買われる側に回るべきだろうか。余りにも短期的株主の自己中心的な考え方である。

確かに、上場企業が買収されるときには、時価に最低20%程度のプレミアムがつく。そういう観点からすると、どの会社も買収されれば、株主は経営権のプレミアム分だけキャピタルゲインを得ることができる。すなわち、会社は買うよりも買われる方が短期的株主にとっていいことになる。
では、経営陣は買われる側に立てるように経営すべきなのか。業界3位以下の会社は常に買ってくれる相手を探さないといけないのか。
会社が買収されるということは、経営権を移譲するのみならず、一般に、従業員取引先、その他利害関係者もその主導権を相手に譲るということを意味することが多い。経営者はそのように利害関係者の境遇を犠牲にしてまで短期的な株主のみのために買ってくれる相手を探さないといけないのか。
経営者は、自らの企業価値を主導的に高めるべく経営するのがその責務だと考える。村上氏は、投資ファンドであり、投資家の利益のために一般的には納得できない意見を言ってもある程度は許容されようが、マスコミがそれを正当化するような記事を掲載することについては甚だ疑問である。
【なお上記意見は、私の個人的な純粋な意見であり、関連する企業等からの依頼に基づくものではありませんし、GCAの会社としての意見でもありません。念のため申し添えておきます。】



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ニッポン放送問題:中間時点の感想

2005年04月22日

(今週の月曜日に和解に向けた基本合意の内容についての記者会見があった。これに関して、日経QUICKからインタビューを受け、昨日リリースされた。その主な内容と(注釈)を下記に紹介する。)
1.資本・業務提携の内容をどうみる
「勝敗は明らかだ。フジテレビがニッポン放の経営権をどうしても取り戻したかったということだろう。そのためにライブドアの要求をのんだ。フジテレビには長期戦の選択肢もあったが、ライブドアとの争いを抱えたまま株主総会を迎えることに腹をくくれなかったということだろう。早期解決の利点もあるが、フジテレビ側がギリギリの交渉をしたとはみてとれない。ニッポン放がライブドア傘下になった場合の混乱の責任がフジテレビに及ぶことを想定した可能性もある」(記者会見で堀江さんが言っていた内容は、フジとの提携等当初からやりたいと言っていた内容である。しかし、その他3者は、当初絶対にやりたくないということを今回やることになったと発表していた。この事実からだけでも明らかだろう。)

2-1.ライブドア側からみた今回の合意内容の評価
「フジテレビと業務提携するという最低限の目標を達成した。結果的にニッポン放株取得に使った資金が戻ってくるうえに、フジテレビからの出資も引き出した。経済的なメリットに加え、想定通りの業務提携ができれば、非常に大きなプラスだ。一方、一時は事実上経営権を取得したニッポン放は、結果的にどうでもよかったということになった。一連の騒動ではマネーゲームとも受け取れる言動もあった堀江社長自身の信用を著しく棄損したことも否めない」
2-2.フジテレビ側からの評価
「そもそもニッポン放の子会社化で戦略を間違えた。子会社化を確実にしたかったのなら、株式公開買い付け(TOB)価格は当時の時価を下回る5950円にすべきでなかった。(値段を上げるべきだった。)さらに、ライブドアの影響力を一掃することが可能な大量の新株予約権の発行決定にも無理があった。資金使途の説明ができる範囲で過半数が獲得可能な規模にすれば、法律的に認められた可能性が高かった」
「TOBが終了した段階で取得した株式は発行済み株式の4割弱にとどまったが、過半数の取得を目指すべき場面で、買い増しをしないことを明言したことも失敗だった。戦略の間違いの対価として子会社化の資金がかさみ、ライブドアとの業務提携をのまされてしまったということだろう」
2-3.ニッポン放送について
「従業員や少数株主には喜ばしい結果となったが、フジテレビ側しかみていなかった経営陣の意思決定には疑問が残る。総資産の半分を占めるフジテレビ株を貸し出し、活用できないようにしたことが会社として利点があったのか。フジテレビのためというのを第一義的に経営者が行動したのは批判されるべきだろう」
3.今後の焦点
「まずは業務提携の内容だ。発表した資本・業務提携は基本合意に過ぎない。ライブドアが業務提携を重要視するのなら、ニッポン放株の譲渡日の5月23日までに、大枠の内容で合意して示すべきだ。(まだ基本合意段階である以上、)株式の譲渡日までは、ライブドア側がこの提携を破棄できる。それを過ぎて(株式譲渡が完了して)しまえば、フジテレビが業務提携を真剣に考えるインセンティブ(誘因)がなくなる。半年後に発表される提携が内容がないものなら、もともとマネーゲームだったといわれても仕方がない」
4.ライブドア・フジテレビ騒動が株式市場に与えた影響
「経営者が、株式を公開し続ける意味を改めて見直すきっかけになった。株式公開は、信用力が増し、市場からの資金調達が可能になる一方、経営の機動力は低下し、コストもかかる。一方で今後数千億、数兆円単位の大規模なM&Aが増えることも予感させた。有効なスキームには資金が集まるようになってきた。企業買収に対する最強の防御策となる株式の非公開化が出てくる可能性が極めて高まったとみている」
「3月期決算企業の株主総会では、企業買収に対する防衛策を導入する企業が増えるだろう。ただ、経営者の支配権維持だけが目的で、だめな経営者から会社を買収する『善』の買収も拒否してしまう『欠陥品』が乱発しそうだ。過剰防衛は非難されるべきだ。導入した後は廃止しにくいため、懸念している。今回の株主総会でのこうした動きについて、株主や市場はしっかり監視する必要がある」




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「経営権プレミアム」と株価:ニッポン放送問題

2005年04月16日

ライブドアの持つニッポン放送株をフジに譲渡する代わりに、フジとライブドアが業務提携することにより和解するのではないかと言われている。ここで、フジ側がTOB価格である5,950円を上回る価額でライブドアから買い取るのは、TOBに応募してくれた人たちに申し訳ないのでできないだろうと報じられている。これは全く「経営権プレミアム」を理解していない人達の考えである。

株式会社の持株比率とその価値は連続ではない。すなわち、たとえば34%から35%、または49%から50%に持分を増やすときの各1%の価値は同じであるが、50%から51%に増やすときの1%は通常の1%の価値よりもずっと大きい(50%を超えたポイントに不連続点がある)。それは、50%を超えることにより、株主総会の普通決議を単独で可決し、取締役の選任等の議案を通すことができるためである。これを「経営権プレミアム」という。したがって、今回、ライブドアからフジへの株式譲渡は、まさしく「経営権プレミアム」をも譲渡するものであり、TOB価格を大きく上回っても全く問題ない。TOB(株式公開買付)の多くは、過半数の株式を取得しようとするものであり、時価である1株の値段に買収する株数を乗じた価額よりもこのプレミアムを足したものになる。
通常、このプレミアムは、最低でも20〜30%で、50%でもおかしくない。仮に6,000円が1株の値段としたとき、20%プレミアムで7,200円、50%プレミアムでは9,000円になる。
ニッポン放送の4/15の終値が、たまたまフジのTOB価格と同額の5,950円だった。現状で、この経営権プレミアムを考慮すれば、7,000円でも8,000円でも、また9,000円で評価して営業権を取得しても、なんら従来TOBに応募した人たちから文句を言われることはないのである。
一日も早く、すべての関係者が納得する和解案で妥結することを期待したい。



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取締役の人数:ニッポン放送問題

2005年04月07日

ニッポン放送の過半数の株式を所有したライブドアが、ニッポン放送の取締役定足数20名の過半数の11名を送り込むと報じられている。この報道をニッポン放送の社員の皆さんはどう受け止めるだろうか。3人や4人じゃなく11人もの取締役が送られてくる。ニッポン放送の社員の皆さんがライブドアにいい感情をもっていない現状で、ライブドアがこの報道を流したとしたらまったく理解できない。ニッポン放送の社員の皆さんはすごいプレッシャーを感じているだろう。

ニッポン放送の定款に取締役会の定足数がどのように記載されているか知らないが、一般には20人を選任するというより、20人以下とすると記載されているのが普通である。であるならば、今回の株主総会で全取締役が退任するという状況で、現在の20人の枠すべてが埋まる前提での過半数の11人を送る必要はない。取締役の数を3人とか5人とかにするということと、その中でライブドア側から2人とか3人とかを送るというのが一番ニッポン放送の社員の皆さんに受け入れやすいのではないか。勿論、今どのような交渉がなされているか、ニッポン放送の定款がどうなっているかを知らないので、勘違いしている可能性がないこともないが、いずれにせよ、ニッポン放送の社員の皆さんを不安にするのはよくないし、過半数を占める株主として配慮不足だと思う。
ニッポン放送の経営陣は、一日も早く、フジの顔色を見るのではなくニッポン放送の従業員、株主のために、ニッポン放送の価値を高めるための対策を考えるべきだし、ライブドアはニッポン放送の社員の皆さんの不安を取り除くために全力を尽くすべきだ。そもそも、今回、1000億円にものぼるフジテレビ株の貸し株など、フジ側が法律すれすれの策を打ち出しても、世論がひどいと思わないのは、ライブドアのニッポン放送の社員への配慮不足によって社員を味方にしていないことが元凶のひとつであるということを自覚すべだろう。



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株主と経営者の責任:ニッポン放送問題

2005年04月03日

ニッポン放送問題で過半数の株式を所有したライブドアとニッポン放送、フジテレビの経営陣が対立している。確かに今回、時間外取引を経ていきなり大株主に躍り出たライブドアに対して、ニッポン放送、フジテレビ側が憤りを感じるのは十分に理解できる。35%超の株主になったときのライブドア側の姿勢も、ニッポン放送よりもフジテレビとの提携を前面に押し出して、ニッポン放送はフジテレビとの提携の道具でしかないような印象を与えまったく好ましくなかった。しかし、今やニッポン放送に関してはほぼライブドアが過半数の株主として6月の定時株主総会を迎えるのは、まずゆるぎない状況となっている。ここで、ニッポン放送の大株主としてのライブドアと現在のニッポン放送の経営陣は、それぞれニッポン放送という会社およびその従業員に対して責任をいかに果たすかということについて前向きの議論をするべきである

対立したまま6月の株主総会を迎えたときに、現在の経営陣が提出する取締役会の陣容の案とライブドアが提出する取締役会の案とがともに株主総会の議案となって提出されることになる。当然、現在の経営陣が提出する案は否決され、ライブドアが提出する案が可決されることになる。そうなれば、現経営陣の総退陣となり、ニッポン放送の経営の連続性が維持されなくなり、会社に大きな混乱が生じることになる。ライブドアとニッポン放送の経営陣は、ニッポン放送の会社自体のため、そこで働く従業員の皆さんのために、6月の株主総会以降の経営体制について早期に議論し、新体制について合意してほしいと思う。
私なら、ニッポン放送の取締役は3人か5人にし、代表取締役は亀淵さんに続投してもらい、現経営陣の人たちも執行役員として残留し、ライブドアとの新しい事業を考える部署をひとつ追加するだけにとどめるよう亀淵社長にお願いする。新たな体制が、ニッポン放送の従業員の人たちを幸せにし、会社の価値を高められるようなものになるよう期待したい



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ソフトバンク・インベストメントとのファンドへの貸し株は認められるべきか

2005年03月26日

3月24日に、フジテレビの防衛策として、ソフトバンク・インベストメントとフジテレビ、ニッポン放送との200億円のベンチャーファンド設立とニッポン放送が所有する13.88%のフジテレビ株の貸与が報じられた。200億円のファンドで、その中の20億円しか出資しないニッポン放送がなぜ1000億円相当のフジテレビ株を貸与しないといけないのか。表面上はともかく、フジテレビの防衛策に他名ならないのは、誰の目にも明白である。

果たして、総資産の半分に相当するような重要資産であるフジテレビ株を経営陣の独断で株主の意向を聞かずして貸与し、議決権をも与えてていいのだろうか。私は、これは許されるべきではないと考える。なぜなら、これが許されれば、敵対的買収がかけられたときに、その重要な資産を使用できなくすることにより、経営者自身が買収者の善悪を判断できてしまい、敵対的買収に対する防衛策の議論を無意味にしてしまうからである。一般に、感覚的に無理があることは、法的にも否定されるものと信ずる。



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フジテレビの「新株発行登録」は許されるべきか

2005年03月22日

3月22日に、フジテレビの防衛策として、500億円の「新株発行登録」なるものを発表した。これはある期間(今回は2年間)、TOBがかかってフジの経営陣が企業価値を毀損すると判断したときは、500億円を限度に割当期日の時点(2週間以上経過の指定日)の株主に対して新株を発行でき、発行条件もその時点で決められるというものである。この新株発行により、経営陣が賛同しないTOBがかかったときに、そのTOBをかけたもの以外に新株を割り当てることができ、経営陣がTOBをかけてきたものを選別できてしまう。株主が株主総会の特別決議で経営陣にこの権限を与えていたならいざ知らず、株主の意見を聞かずして経営陣がTOBの善悪を判断することは許されるべきではない



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「焦土作戦」について

2005年03月16日

最近、焦土作戦やクラウンジュエルというM&A用語がニュースでとびかっている。しかし、多くの解説者は十分に意味を理解せずにこの用語を使っているようだ。
そもそも、「焦土作戦」とは、会社の資産を処分し魅力のない価値のないものにして買収意欲をそぐ作戦のことである。しかし、今回のニッポン放送のポニーキャニオン株の売却自体を焦土作戦だと思っている人が多いようだ。焦土作戦は、その企業の価値を下げる作戦であり、ポニーキャニオン株を売却すること自体が焦土作戦になるわけではなく、安い価格で譲渡した場合のみであり、十分に高い価格で譲渡した場合は焦土作戦とはならない。たとえば、ポニーキャニオン株の価値が500億円だとして、それを100億円で売却し場合は焦土作戦となるが、1000億円や2000億円でもしも売却されたならば、この売却によってニッポン放送の価値自体が上がることになり焦土作戦ではなくなる。すなわち、譲渡対価が問題だということである。

もしもニッポン放送の経営陣が、ニッポン放送の会社自体の魅力や価値をなくすためにポニーキャニオン株を安く売却するという本当の焦土作戦にでたとするとどうなるか。ニッポン放送の株価は暴落し、ライブドアのみならず一般株主も損失をこうむり、株主代表訴訟となるであろう。また、ニッポン放送の価値を下げて困るのは株主だけではない。ニッポン放送の従業員も不幸になる。ニッポン放送の株主や従業員を不幸にするような意思決定を、ニッポン放送の経営陣がしていいのだろうか。ニッポン放送の経営陣は、その株主や従業員を幸せにする責任を負っているはずである。その経営陣がフジの顔色を伺ってそのような行動をとれば非難されるべきである。
ただし、もしもニッポン放送の経営陣が真にニッポン放送の株主や従業員のことを考えて、フジと関係のある間に高くポニーキャニオン株を売却しようとするなら、それは当然、焦土作戦とはならない。したがって、ポニーキャニオン株を売却する場合、どのような意図どのような価格で売却されるかが最大の問題となる。



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「ニッポン放送の仮処分決定」について

2005年03月14日

3月11日、ニッポン放送に対し、新株予約権発行に差止めを命じた。ライブドア側の主張をほぼ全面的に認めた決定である。今回の東京地裁の決定の2ページの要旨および50ページ余の主文を読んでみた。非常によく考え抜いた説得力のある内容である。争いの余地をほぼ残さない内容であり、高裁に持ち込んでも逆転は難しいという印象である。

そもそも、できあがり3分の2を超える第三者割当増資を打ち出したフジ側の作戦は、「過ぎたるは…」の感が強い。結果論かもしれないが、ニッポン放送の過半数のみの支配を目標にし、説明可能な資金使途を示していれば展開が違っていたような気がする。
いずれにせよ、今後はどちらが株主総会の過半数を制するかが最大の焦点となる。現状では、わずかにライブドアが有利のようにも見えるが、6月の株主総会までは予断を許さない状況である。
今後の予想される展開としては、フジ側がニッポン放送の株主総会の過半数取得を諦めた時点で新たな動きがあると予想する。すなわち、もしもフジ側が株主総会で負けた場合、ニッポン放送の取締役会はライブドア側に支配されることになり、中途半端な2番目目の大株主になり非上場になった際には、現金化のきわめて難しい資産になってしまうからである。このような状況下では、フジ側は、ライブドアに対して、フジとの提携と交換にフジの所有するニッポン放送株の引取りを要求してくる可能性がある。今後の進め方を間違うと、特に敗れた側が経済的にも社会的にも大きな打撃を被ることが考えられる。



M&A

「企業価値」とは

2005年03月09日

ニッポン放送株をめぐる買収合戦で、よく「企業価値」という言葉が出てくる。しかし、今回の事件の関係者に「企業価値」の定義を聞けば、みんな違う答えが返ってきそうな気がする。そもそも「企業価値」とは、「誰にとっての」という言葉が前につかなければ明確な意味がつかめない。「株主にとっての企業価値」、「経営者にとっての企業価値」、「従業員にとっての企業価値」、「債権者にとっての企業価値」、「お客さん(リスナー)にとっての企業価値」、そして大きくとらえると「社会にとっての企業価値」というものも考えられる。この定義を明確にせずして議論をしてもかみ合うはずがない。

そもそも、Enterprise Value (EV) というものを直訳して企業価値という人が多い。しかし、ここでいうEVとは、株式の価値と有利子負債額の合計のことで、株式価値が一定で有利子負債だけが増えてもEVは大きくなるが、この場合、企業価値が大きくなったというイメージはない。私は、EVのことを「事業価値」と訳すことにしている。
「企業価値」という言葉を用いるときには、その定義を確認してからでないといけないことを広く知ってほしいと思う。



M&A

ライブドア/ニッポン放送 問題 (今回のような買収は再発しない)

2005年03月01日

ここのところ、色々なメディアで様々なコメントがされている。どうも殆どの人たちが小さな論点にのみ焦点をあて、今回の問題の本質を理解していないように思う。
そもそも、今回の問題は、ライブドアが時間外の大口取引によって突然1/3を超える大株主になったことが発端である。このような時間外の株取引による1/3超の敵対的買収が問題であると広く認知され、制度の見直しがされる中、時間外でいきなり大株主となるような事件がどれだけ起こるだろうか。今後ほとんど起こらないだろう。そのような再発する可能性のほとんどないことを取り上げて、敵対的買収の一般論を論ずるのはまったくの的外れである。

今後、このように敵対的買収を謀る企業が出てきた場合は、TOB(公開買付)合戦となる。今回の事件を一般化するなら、日本のTOB制度をそのようにすれば、会社の価値を毀損する買収者から会社を防衛できるかという前向きの議論に変えていくべきである。対象会社の経営者に接触もせずにいきなりTOBをしかけてくる買収者に対して、少なくとも経営陣に考える時間を2週間以上与えるべき等である。今回の極めて例外的な敵対的買収に惑わされず、前向きにTOB制度についての議論に発展していくことを心から期待したい。



M&A

「ライブドア/ニッポン放送 問題 (買収者の善悪について)」

2005年02月26日

A.現状の問題点を整理してみると、【第三者割当増資の予約権を発行すること自体について】は、
1.一般に、今回のフジの第三者割当増資予約権の発行は許されざる対応策である。これが一般に認められれば、現在議論されている平時に導入する敵対的買収に対する防衛策の議論は無用になる。取締役会だけで決議可能な第三者割当増資を武器に非効率な経営陣が守られてしまう。
2.しかし、今回のライブドアのニッポン放送への当初の35%を越える買収が、通常の株取引ではなく、時間外の大口取引だったことで話が複雑になっている。
では、一般に認められる筈のない今回の第三者割当増資が認められるのは、どのような状況であるかを考えてみる。(当初のライブドアの株式取得に何ら違法性がなかったことが前提)

●ライブドアがニッポン放送の株主になることによって、ニッポン放送の会社の価値を大きく毀損する場合。(悪の買収者である場合)
これが証明されたときは、今回の第三者割当増資が例外的に認められてしかるべきである。
では、この要件を満たすかどうかを証明する責任(挙証責任)はライブドアとフジのどちらにあるか。これは、通常否認されるべきものを例外的に認めさせようとするフジ側と考えるのが妥当であろう。現在フジが主張している、「ライブドアがニッポン放送の株主になれば関連会社の取引を打ち切るので会社の価値を毀損する」という主張は、大株主の脅しでしかなく説得力に欠ける。
しかし、ライブドア側もニッポン放送の会社の価値を毀損せず、むしろ価値を向上させられるということを積極的に具体的に示すべきであろう。
B.次に、もしも第三者割当増資すること自体が認められたときに問題となるのが、【その発行数】である。全量実行すれば、発行済み株式総数の2/3にも達し、株主総会の特別決議を単独で可決できることになる。すなわち、極論すれば、他の株主の株式を紙切れにでもしえる数になるのである。このような大量の新株発行に関する決議が取締役会でされた。確かに違法ではないが、法の趣旨から考えれば、一般株主の意見を無視できないはずである。万一、第三者割当増資が認められても、発行数については制限する必要があると考える。



M&A

「ライブドア/ニッポン放送 問題 (第三者割当新株予約権について)」

2005年02月25日

本来、第三者割当増資であれば「主要目的ルール」があり、会社の支配権の維持が目的であってはならない。新株予約権もそれに準じると考えると、一般的に考えて、ニッポン放送が実施したような発行は認められるべきではない。 こうしたことができるとすれば、現在議論されている敵対的な買収に対する対抗策の議論の意味がなくなってしまう。常に新たな株主を排除できてしまうことになり、利用目的に制約があるポイズンピル以上に効果が出てしまう。特に今回の予約権がフルに実行されれば、フジの持株比率も2/3にも達する。これは、株主総会の特別決議を通せる、すなわち、重要な営業の譲渡や新株の有利発行等、フジの圧倒的な支配権取得を意味する。このような2/3にも達するような新株予約権の発行を取締役会ですること自体、株主の権利保護の観点からは大いに疑問が残る。

フジは、ライブドアが大株主になることによって、ニッポン放送の株主価値が毀損するともとれるようなコメントを出している。しかし、ライブドアが40%を占める現在の株主に仮に、多数決で今回の第三者割当予約権について賛否を問うとすれば、恐らく否決されるであろう。したがって、フジとしては、株主価値の毀損ではなく、会社の価値の毀損の観点から議論しなくてはならない。
ところで、今回結論が見えにくいのは、ライブドアによるニッポン放送の買収自体がすっきりといいイメージではないためである。ニッポン放送を買収してその会社の価値を高めようというより、マネーゲームの気配がする。
 今回のような大量の第三者割当増資の手法が一般的に認められた場合、悪い経営陣の会社に良い投資家が買収をしかけたときに、今回と同様の対抗策が使えてしい問題である。
今回はライブドアの買収そのものがインサイダー等、本当にまったく違法性がなかったのか、また、ニッポン放送の会社の価値を毀損するものではないのかが焦点となる。
ライブドアの今回のM&A手法が乗っ取り屋的で批判を浴びているだけに、裁判所がライブドア側の差し止め請求を認めないという判断もあり得る。しかし、その場合は、理由を明確にして、「一般的にはこのような手法は認めないが、今回は例外的にこういう理由(会社の価値を毀損する等)で認めた」という形をとる必要がある。いずれにせよ、今回の裁判所の判断は非常に重要である。



M&A

「ライブドア/ニッポン放送 問題」

2005年02月22日

昨今、ライブドアニッポン放送株取得についての話題で持ちきりである。今日の夕刊にも、ライブドアがニッポン放送株の4割以上を取得したと報道されている。そもそも「時間外市場内取引」というM&A関係者なら以前から知っていてもほとんどの人たちが知らない、一見違法そうで違法ではない大口相対取引でライブドアはいきなりニッポン放送の大株主に踊り出た。今回の問題は、株主と経営者、従業員との関係について考えさせられることが多い。本件、そもそも、村上ファンド株が売却していなければ、2グループの合計で過半数の株式を取得しており、ニッポン放送が第三者増資をしてこの両者の持ち株比率を希薄化しない限り防衛はできない。残念ながら、ニッポン放送は資金が潤沢で、第三者割当増資をしても資金使途が明確とはならずライブドアから訴訟され勝ち目が必ずしも高くない。ニッポン放送についてはすでに勝負あったということだろう。あとは、フジサンケイグループがいかに本丸を守るかということに焦点は移る。

ところで、会社は誰のものかと問われると、経営者でも従業員でもなく株主のものという答えが多いかもしれない。しかし、今回の件で多くの人たちが違和感をおぼえるのは、所有していれば被所有者を軽んじていいのかということではないかと思う。ライブドアの堀江さんに会ったことはないし真意は分からないが、もしも、ニッポン放送を買収しいい会社にしようと思っていたとしたら、私なら、35%以上の株式を取得したと発表した日に、ニッポン放送の社員の皆さんに何がしかのメッセージを出すだろう。被所有者は所有者に隷属すべしともみえる行動には賛同しかねる。確かに、これまでの株主以上にいい会社にできるかも知れない。しかし、被所有者に対する堀江社長の態度には賛同する人は少ないに違いない。



M&A

『事業再生講座』(一橋大学大学院ICSと経済産業省協賛)

2005年02月10日

2/14から一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS経済産業省協賛の事業再生講座「事業再生の経営と法務」が開講する。この講座は、毎週月・木1時間半の講義が各コマ、合計20コマの講義と1泊2日の合宿で構成されている。金融界、法曹界、各界の先端を走るプロフェッショナルによる講義である。前半が経営に関する講義、後半が法務に関する講義である。最後の合宿では、具体的な事例を想定し、再建計画を立案してもらおうと計画している。
今回は、余り多くの方に声をかけず、応募動機等のレポートを課し比較的短い期間だけ募集を行ったが、40名の募集に対し約240名もの方々が応募してくださった。スタッフ一同非常に感謝している。しかし、残念ながら基本的に1社1名とし業界を分散するという考えから、是非とも参加して欲しい方々も参加していただけない状況になってしまった。ここに深くお詫び申し上げたい。

この講義は、現在の日本の事業再生の最先端の方々の話を聞き、合宿も含め短期間に事業再生の模擬体験をしてもらおうというものである。
今回の講座をベースにICSでは今年の夏か秋にICS単独の事業再生講座を計画中である。
今回残念ながらご参加いただけなかった方々もその際には是非ご参加願いたい。

【今回のスケジュール】
2/14 (月) 1.ガイダンス:佐山 展生
      2.事業再生価値評価の理論と実践、事業価値評価の考え方佐山 展生
2/17 (木) 3.事業再生価値評価の理論と実践、事業価値評価の実際
         渡辺 章博GCA株式会社 代表取締役パートナー
      4.事業再生の具体的手法@投資ファンドと事業再生
         松木 伸男株式会社MKSパートナーズ 代表取締役社長・CEO
2/21 (月) 5.事業再生の具体的手法@財務リストラクチャリング
         横山 洋一郎日本政策投資銀行 事業再生部長
      6.事業再生の具体的手法@LBOファイナンス
         笹山 幸嗣株式会社みずほコーポレート銀行投資ファイナンス営業部次長
2/24 (木) 7.事業再生の具体的手法AM&Aスキーム 
         服部 暢達ICS 客員教授
      8.事業再生の具体的手法AM&Aの留意点 
         佐山 展生
2/28 (月) 9.事業再生の具体的手法B事業再生事例1
         澤田 貴司株式会社KIACON 代表取締役社長・CEO
      10.事業再生の具体的手法B事業再生事例2 
         藤巻 幸夫福助株式会社 代表取締役社長
3/3 (木) 11.事業再生の具体的手法B産業再生機構による再生 
         冨山 和彦株式会社事業再生機構 代表取締役専務
      12.企業再生の法的手法@事業再生における法務の役割
         永石 一郎ICS 客員教授永石一郎法律事務所 代表弁護士
3/7 (月) 13.事業再生の具体的手法C事業再生におけるM&Aの法務(実務編)
         米 正剛森・濱田松本法律事務所 弁護士
      14.事業再生の具フ的手法C事業再生におけるM&Aの法務(理論編) 
         布井 千博ICS 教授
3/10 (木) 15.企業再生の法的手法A破産法(理論編) 
         永石 一郎
      16.企業再生の法的手法A破産法(実務編) 
         小林 信明小林総合法律事務所 代表弁護士
3/14 (月) 17. 企業再生の法的手法B民事再生法(理論編) 
         小林 秀之ICS 教授
      18. 企業再生の法的手法B民事再生法(実務編) 
         松嶋 英機西村ときわ法律事務所 代表パートナー弁護士
3/17 (木) 19.企業再生の法的手法C会社更生法(理論編) 
         山本 和彦ICS 教授
      20. 企業再生の法的手法C会社更生法(実務編) 
         瀬戸 英雄光和総合法律事務所 弁護士
3/19 (土) 合宿 (於: エクセルホテル東急) 19日13:30開始、20日 12時終了予定
3/20 (日)



M&A

「会社の顔」:三菱自動車の復活を期待して

2005年01月30日

日産自動車の復活と三菱自動車の今後を比べる人がいる。確かに会社の危機的な状況については似ている点もある。しかし決定的に違うのは、日産は収益が上がらずに負債が膨れ上がってはいたが、不良車を製造したわけではなく、ブランドが致命的に毀損していたわけではないことである。一方、三菱は不良車を製造し、それを認めず隠蔽し、致命的に三菱自動車のブランドが毀損していることだ。今、三菱の車を買っても中古車で売るときにまともな値段で売れそうになく、また不良部品が使われているのではないかという危惧を払拭しきれない。消費者からそっぽを向かれた企業を立て直すのは従来どおりのやりかたではできない。

コマーシャルでリコールを真面目にやっていますというものが流れていたこともあった。リコールすることは当たり前のことで、だからと言って消費者を振り向かせることはできない。通常の企業再生のようにコストダウンだけでは再生しない。会社が変わったことを消費者に強烈にアピールしなければいけない。そういう意味で三菱自動車の再生はダイエーの再生よりもはるかに難しい。ダイエーは、よいものを適正な価格で楽しく提供できれば消費者はついてくる。しかし、自動車は、消費者が見ても安全かどうか分からない。それを知らしめ、消費者に安心感を与えて買ってもらうところまでもってくるのは極めて難しい。
通常の会社の建て直しであれば、三菱グループの人事と三菱系の金融機関の支援で何とかなったであろうが、今回はそんな甘いものではない。かわり栄えのしない新しいトップ人事が発表された。今回選任された三菱グループの新社長が、市場にアピールし消費者を惹きつけられる可能性は1%以下であろう。会社が変わったことを印象付けないといけないのに、従来どおりのトップ人事では会社が変わっていないことを世に印象付けただけである。勿論、今回のトップの方たちを知っているわけではないが、消費者には変わっていないという印象だけが残る。
消費者のブランドに対する印象を変えるには、思い切った社長の抜擢とその社長による市場への強烈なアピールしかない。「会社の顔」を変え、アピールすること、三菱自動車は変わった、面白い、自動車を買ってみようと思わせないといけない。野球でいうと、長島監督や星野監督のようなトップ人事がなければ消費者は冷ややかに推移を眺めているだけである。湯水のように三菱グループが資金を投入している。いまのままではざるに水を入れているようなものだ。1%以下とはいえ、今回のトップが会社を再生し会社と関連企業群の従業員とその家族に明るさを取り戻すことを心から祈りたい。



M&A

M&Aアドバイザーの利益相反問題(商事法務 NBL No.800掲載分)

2005年01月01日

日本の再生M&Aにおいては、主力銀行の関連証券会社が債務者のM&Aアドバイザーになるケースが多い。最近の例で言えば、ダイエーのアドバイザーを主力3行の関連証券会社が務めていた。カネボウも主力銀行の関連証券がアドバイザーであった。これら銀行系証券会社のM&Aチームのいくつかの力量は高く評価するも、親銀行が債務者の主力取引行であるという構造上A親銀行の利益よりも依頼元の利益を優先できるかというと、それは困難といわざるを得ない。銀行系証券会社は、親会社である銀行とチャイニーズウォールがあるという。しかし、子会社である証券会社の人事権は実質的に親銀行が持っており、そのような状況で、本当に依頼元である債務者の利益を優先し債権者である親銀行と対峙できるのだろうか。それはありえない。

その他、証券会社がアドバイザーとなる場合、その証券会社がM&Aの交渉相手先の主幹事先であるケースもある。主幹事証券先を相手に厳しい交渉をするのは容易ではなく、銀行系の証券会社同様の利益相反問題が生じる。その他、外資系投資銀行の中には、売手側である売却対象の企業のマイノリティーの株主でありながら、買手側企業のアドバイザーをしていたりすることもある。買手側のアドバイザーであるにもかかわらず、買収代金が大きい方がその投資銀行の収入が増えることになる。実際に、その案件の買収金額は外から見る限り高い。
上記のように日本のM&A市場においては利益相反問題があらゆるところに存在するが、これまで問題視されてこなかった。このような状況は利益相反に敏感な米国においては考えられない。では、なぜか。何の利害関係もないしっかりした独立系のM&Aアドバイザー会社がないこと、M&Aのアドバイザーをしている人数は増えたが真のプロはわずかであることに起因する。残念ながら、M&A案件を紹介する程度の独立系の会社は存在しても、大きな再生案件を取り仕切るような会社はない。しかし今ないからといって放置していい問題ではない。充実した布陣の独立系のM&Aファームがいくつも市場に登場することが望まれる。



M&A

ポスト産業再生機構(週刊東洋経済2005新春合併特大号掲載分)

2004年12月25日

投資ファンドの優勝劣敗が鮮明に、7割超が淘汰の憂き目に遭う
産業再生機構(以下、機構)の買い取り期間が2005年3月末で終了する。
「10兆円の政府保証枠、100件という買い取り目標からして、実績の金額や案件数が少なすぎる」という批判は当たらない。2年で100件というのは元々無理だし、10兆円はあくまでも保証枠の上限である。

機構は、金融と産業を同時に再生する目的で作られた。この意味では、確実に成果を挙げてきたといえる。例えば、機構がなくとも、カネボウの化粧品部門の再生はできただろう。が、機構がなければ、カネボウ全体を再生に向かわせることはできなかった。何がしかの権威がなければ、そこまでもっていけなかった。一部で民業圧迫に近いこともあったかも知れないが、「いい結果を出したい」という意気込みの現われだったと解釈しようではないか。金融と産業の同時再生において、機構の果たした役割は決して小さくない。
 約150人の機構スタッフが、企業再生の現場で経験を積めたことも大きい。機構スタッフは、弁護士や投資ファンドなど、M&A(企業の吸収・合併)に関与する人のほとんど全てと接する機会を持てた。買い取り期間が終了した後、機構スタッフは自ら独立したり、投資ファンドに引き抜かれたりするなどして、M&A、ファンド関連業界において、人材の新陳代謝が進むだろう。
機構としては、買い取り期間終了後も、優秀な人材を一定程度維持する必要がある。ただ、人材流出は、機構スタッフの市場価値が上がったことの証左。ある程度は仕方のない面もある。
マーケットは拡大一方だがプレイヤーはごくわずか
2005年は、機構スタッフの人材流出も手伝って、事業再生を手がける投資ファンドの優勝劣敗がより明確になる年だ。下の図は事業再生の潜在的な市場を示す概念図だ。M&Aの市場と事業再生ニーズとはかなりの部分、オーバーラップする。事業再生の資金供給能力は、事業再生ニーズよりも小さいが許容範囲、しかし、人的供給能力は小さく不十分。
 人的供給能力については、機構からのスタッフ流出で、かなりの拡大が見込める。資金供給能力についても、世界的なカネ余り現象に加え、投資ファンドの認知度向上とともに、高まりつつある。こうした背景から、少なくとも向こう5年、事業再生、投資ファンドのマーケットは拡大こそすれ、縮小することはないと断言できよう。
 一方で、投資ファンドの優勝劣敗が鮮明になることは避けられない。私は、事業再生を手がけるファンドの7割以上は5年以内に実質的になくなると思っている。というのも、案件発掘から企業価値の増大、エグジット(株式売却や再上場などのいわゆる「出口」)までの全てをできる投資ファンドは5社程度、どんなに多く見積もっても10社もないからだ。
それ以外のファンドは、自動車に喩えれば、見かけは自動車だが、ブレーキやアクセル、ハンドルがないようなもの。場合によっては、運転手すら不在だったり、間違っていたりする。アクセルは企業価値を向上する馬力、ブレーキやハンドルは危ない案件に突っ込まない判断力、運転手とはファンド幹部の経営力のことだ。
 企業サイドでは、大企業における子会社の社長ポストの位置づけが変わるだろう。これまでは「上がりのポスト」だったが、真の経営者を育てる絶好の場所であることに、大企業の経営幹部は徐々にだが気付きはじめるはずだ。
こうした機会を大企業が生かすようになれば、投資ファンドにおける「再生先に派遣する経営者の不足」といった問題は解消。日本経済の全体に与える影響は決して小さくないだろう。



M&A

ホームページ開設にあたって

2004年12月10日

帝人でのポリエステル重合の技術屋としての社会人生活を皮切りに、三井銀行(退職時さくら銀行)でのM&Aのアドバイザリー業務、バイアウトファンドであるユニゾン・キャピタルの共同設立を経て、今年の4月より一橋大学大学院国際企業戦略研究科、そして9月からはM&Aアドバイザー専門会社であるGCA株式会社での業務も本格稼動し始めました。
今後、今までにも増して、色々な方々との接点を持つことも多くなると思います。私が、今何を考え、世の中の動きに対してどう感じているかを少しでも多くの方に伝えることができ、共感いただくことができれば嬉しく思います。

佐山展生



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