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M&A

ポスト産業再生機構(週刊東洋経済2005新春合併特大号掲載分)

2004年12月25日

投資ファンドの優勝劣敗が鮮明に、7割超が淘汰の憂き目に遭う
産業再生機構(以下、機構)の買い取り期間が2005年3月末で終了する。
「10兆円の政府保証枠、100件という買い取り目標からして、実績の金額や案件数が少なすぎる」という批判は当たらない。2年で100件というのは元々無理だし、10兆円はあくまでも保証枠の上限である。

機構は、金融と産業を同時に再生する目的で作られた。この意味では、確実に成果を挙げてきたといえる。例えば、機構がなくとも、カネボウの化粧品部門の再生はできただろう。が、機構がなければ、カネボウ全体を再生に向かわせることはできなかった。何がしかの権威がなければ、そこまでもっていけなかった。一部で民業圧迫に近いこともあったかも知れないが、「いい結果を出したい」という意気込みの現われだったと解釈しようではないか。金融と産業の同時再生において、機構の果たした役割は決して小さくない。
 約150人の機構スタッフが、企業再生の現場で経験を積めたことも大きい。機構スタッフは、弁護士や投資ファンドなど、M&A(企業の吸収・合併)に関与する人のほとんど全てと接する機会を持てた。買い取り期間が終了した後、機構スタッフは自ら独立したり、投資ファンドに引き抜かれたりするなどして、M&A、ファンド関連業界において、人材の新陳代謝が進むだろう。
機構としては、買い取り期間終了後も、優秀な人材を一定程度維持する必要がある。ただ、人材流出は、機構スタッフの市場価値が上がったことの証左。ある程度は仕方のない面もある。
マーケットは拡大一方だがプレイヤーはごくわずか
2005年は、機構スタッフの人材流出も手伝って、事業再生を手がける投資ファンドの優勝劣敗がより明確になる年だ。下の図は事業再生の潜在的な市場を示す概念図だ。M&Aの市場と事業再生ニーズとはかなりの部分、オーバーラップする。事業再生の資金供給能力は、事業再生ニーズよりも小さいが許容範囲、しかし、人的供給能力は小さく不十分。
 人的供給能力については、機構からのスタッフ流出で、かなりの拡大が見込める。資金供給能力についても、世界的なカネ余り現象に加え、投資ファンドの認知度向上とともに、高まりつつある。こうした背景から、少なくとも向こう5年、事業再生、投資ファンドのマーケットは拡大こそすれ、縮小することはないと断言できよう。
 一方で、投資ファンドの優勝劣敗が鮮明になることは避けられない。私は、事業再生を手がけるファンドの7割以上は5年以内に実質的になくなると思っている。というのも、案件発掘から企業価値の増大、エグジット(株式売却や再上場などのいわゆる「出口」)までの全てをできる投資ファンドは5社程度、どんなに多く見積もっても10社もないからだ。
それ以外のファンドは、自動車に喩えれば、見かけは自動車だが、ブレーキやアクセル、ハンドルがないようなもの。場合によっては、運転手すら不在だったり、間違っていたりする。アクセルは企業価値を向上する馬力、ブレーキやハンドルは危ない案件に突っ込まない判断力、運転手とはファンド幹部の経営力のことだ。
 企業サイドでは、大企業における子会社の社長ポストの位置づけが変わるだろう。これまでは「上がりのポスト」だったが、真の経営者を育てる絶好の場所であることに、大企業の経営幹部は徐々にだが気付きはじめるはずだ。
こうした機会を大企業が生かすようになれば、投資ファンドにおける「再生先に派遣する経営者の不足」といった問題は解消。日本経済の全体に与える影響は決して小さくないだろう。



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